「ヨコハマ買い出し紀行」を知っていますか?
今から20年以上前、とある漫画の連載がスタートしました。
その名は「ヨコハマ買い出し紀行」
タイトルだけみれば、横浜の名物名所を紹介するお話のように思えます。確かに終始のんびりとした雰囲気で、日常を淡々と過ごしていくだけの、ゆる~い物語です。しかしながら、読者はすぐに違和感を覚えることでしょう。
人類は少しずつ滅亡に向かっており、主人公のお姉さん(アルファさん)はロボットなんですから。
12年間の長きにわたり連載され、作中の時間も同じよう過ぎていく、ちょっと珍しい物語。沈み行く未来の三浦半島を舞台ににしており、実際の場所をモデルにしたと思われる場面がいくつも登場します。
近い将来、作中のようになるかもしれない…
そんな場所を、少しずつ巡っていきたいと思います。
*本ブログの内容は筆者の個人的見解を述べたにすぎません。違うご意見の方もいらっしゃると思いますが、ぜひお手持ちのお考えを大事にしていただきたいと思います^^
個人的イベントー!(住宅地の急な下り坂)
ご無沙汰してしまい申し訳ありません。
今回は、第22話の個人的イベントー!において「千駄ヶ崎隧道」横の坂道を通過したと思われるアルファさんが、その後下る「住宅地の急な下り坂」をご紹介します。
「千駄ヶ崎隧道」と「Y字路」の間にある「住宅地の急な下り坂」ということになりますが、下記の記事に示させていただいた「東ルート」上にあることになります。
ただ、「東ルート」上の急な下り坂を持つ住宅地は山ほどあるわけで、絞り込むのにヒントが必要です。そのヒントは坂を下るアルファさんの背後にありました。
おわかりでしょうか。そう「送電線」の鉄塔です。
横須賀三浦には鉄塔が多くあるイメージがあります。実際「ヨコハマ買い出し紀行」の背景には多くの鉄塔が描かれています。
その中のひとつ「送電線」の鉄塔は、実は規則性があります。下記に送電線の位置を記します。
久里浜の火力発電所から北西に伸びて行くのがお分かりになりますでしょうか。この送電線の資料を基に以下の条件に合う場所をピックアップします。
- あまり奥まってない、頻繁に使われるような下り坂である。
- 背景に段々に造成された土地がある。
- さらにその後ろに森に囲まれた山と送電線が見える。
下図の赤色で今回考察した下り坂を示しております。条件に合いそうな場所は4か所見つかりました。また、緑色で「カフェアルファ」から「Y字路」までの予想行程を記載しております。
- 「下り坂」候補①(横須賀市ハイランド3丁目第2公園付近)
- 「下り坂」候補②(横須賀市ハイランド3丁目22付近)
- 「下り坂」候補③(横須賀市ハイランド2丁目40付近)
- 「下り坂」候補④(横須賀市ハイランド1丁目53付近)
それぞれ対応する「鉄塔候補①~④」と「経路候補①~④」があります。
ではひとつづつ見ていきます。「下り坂」候補①です。
公園から撮影できたので構図はバッチリです。「下り坂」「段々に造成された土地」「送電線の鉄塔」及び「森に囲まれた山」ほぼイメージ通りです。
弱点はこの後「県道27号」に抜けるには若干余計なコース取りとなるところです。地図上右から左に抜ける途中で左折しこの公園にアクセスするのですが、左折しない方が少しだけ早く「県道27号」には抜けることができます。
「下り坂」候補②です。
「下り坂」は角度が浅いですね。また、「造成された土地」も段々になりきれてません。「送電線の鉄塔」はやや遠いでしょうか。背後に他の造成地が見えないのも気になります。ただ、「県道27号」に抜けるには最短距離になります。
「下り坂」候補③です。
「下り坂」の角度は浅いですが、建物が建っていないので雰囲気はバッチリです。「送電線」の鉄塔もいい距離です。ただ、盛り土の造成ではないこと。背後に他の造成地はうかがえないことが弱点です。
「下り坂」候補④です。
「下り坂」の角度は浅いですが、画像奥にまで造成された土地の雰囲気は合っています。森が見えないこと。段々ではないことが残念です。
実はもうひとつあります。「下り坂」候補⑤(横須賀市ハイランド2丁目4付近)です。(現地に行ったのですが人目があったのでグーグルマップで失礼します(汗))
実はここが最高にイメージ通りだったりします。この付近のメイン道路であり利用する可能性が高いこと、「下り坂」の角度も「段々に造成された土地」も「背後の造成地」や「森に囲まれた山」もあります。
ただ…送電線の鉄塔がありません(泣)最大のポイントが無いのでは採用するわけにもいかず、無念です。
結局のところ、100%作中の描写と一致する場所は見つかりませんでした。かろうじて「下り坂」候補①が有力でしょうか。
しかし「東ルート」上に条件と合致する場所は、今回調査した「ハイランド」と北西の「大矢部団地」の一部にしかありませんので、このあたりがモデルとなった可能性はあると思います。
もしかしたら100%作中の描写と一致する場所が存在するのかもしれませんが、お心当たりの方がいらっしゃいましたら教えていただけると嬉しく思います。
【最寄りの交通機関】
個人的イベントー!(トンネル横の上り坂)
今回は前回紹介させていただいた「個人的イベントー!(Y字路)」から作中の時間を少し巻き戻した場面、トンネル横の上り坂を紹介いたします。
北の町に向かうアルファさんが、Y字路に向かう途中で通る場所です。その場所は意外にも「子海石先生の病院」「ORANGE FOOT」の側だと思われます。
北の町に向かうには最短距離ではないのですが、理由についてはこちらの記事をご参照ください。
現地はこのようになっており、「千駄ヶ崎隧道」手前から左手の旧道に入ります。
何故この場所と考えるのかといいますと、前述の記事の東ルート上にあるということと、作中の送電線の鉄塔とは違う折れた鉄塔の存在です。
旧道を進むとよく似た鉄塔が見えてきます。
この旧道は元々久里浜からORANGEFOOT付近にあった千駄ヶ崎砲台に物資を輸送するために大正時代に作られたものです。この先にある昨年利用停止となった南処理工場(ごみ処理場)の敷地を抜け、明神第3、2,1隧道を通ることで久里浜の水没地域を回避し、ハイランドから岩戸経由で衣笠方面に抜けることができます。
留守だったでしょうが、アルファさんは子海石先生を訪ねたかもしれませんね。北の町で会えることになるとは思ってもみなかったでしょう。
次回はここから衣笠に向かう途中にある「住宅地の急な下り坂」をご紹介します。
アルファさんの三浦半島北上ルート
個人的イベントー!(トンネル横の坂道)の記事を書いていくうちに、先に説明が必要なことに気づいたので考察記事を書かせていただきました。
ここでは、アルファさんが三浦半島を北上する際にどのようなルートを通ったのか考えてみます。
作中よく「尾根道」という言葉が出てきますが、実は「尾根道」ばかりを選んでいる訳ではないようです。むしろ、それは海岸線が健在な現代と比較して「尾根道」が多いだけであって、朝比奈以南ではアルファさんはかなりの頻度で海岸線を移動しています。
アルファさんが三浦を離れる描写は以下の通りです。
第1話「ヨコハマ買い出し」
第89話「ココネ送り」
第12話「写真撮影」
第22話「個人的イベントー!」
第27話「ココネ送りⅡ」
第33話「ヨコハマ買い出しⅡ」
第64話「ちょっと長めの外歩き」
第111話「お客さんの来ない日」
第117話「長距離大荷物運びの練習」
第120話「きぬがさへ買い物」
第140話「ヨコハマ買い出しⅣ」
これらを比較すると三種類に分かれます。
- 水面を左手に見る。
- 水面を右手に見る。
- 水面の描写なし。
つまり海岸線の西側を通るか、東側を通るかです。上記の状況に当てはめると
- 西ルート:1,12,27、117話の4回
- 東ルート:8,33,111,140話の4回
- 不明:22,64,120話の3回
となります。
特筆すべきは第1話と第33話と第140話です。ヨコハマに買い出しに行く描写ですが、第1話のみ西ルートで、後は東ルートとなります。
この時代ヨコハマに買い出しに行くには、衣笠IC付近から朝比奈IC付近を経由する必要があります。
衣笠ICには県道214号経由県道26号から北上する西ルートが最短距離ですが、必ずしもそうしているわけではないようです。
なぜわざわざ遠回りの東ルートを選択する場合があるのでしょうか。おそらくそれは第140話のアルファさんのセリフに集約されます。
「できる限り海の近くを走ります」
この理由は明らかにされていませんが、僕はおそらく「治安」が理由の一つだと考えています。一切の犯罪の描写がないこの作品なので忘れがちですが、夕凪の時代は「宅配業者が護身のために銃を持ち歩いている物騒な世の中」なのです。
つまり人口減少が顕著な朝比奈以南の山あいの幹線道路では「追いはぎ」にあう可能性があるのかもしれません。県道26号線の現在の東漸寺付近は狭隘で南下する旅人を賊が待ち構えるにはうってつけです。
(現代の東漸寺付近)
おそらく第12話以降、治安の悪化からこの付近を一人で通ることを控えているのではないでしょうか。それでも第27話はココネと二人だったので最短距離を通ったのかもしれませんね。
…まぁ、射撃精度の高さからアルファさんはFCSを搭載していると考えられますし、人に聞こえないエンジン音も聞こえますし、見えない月も見えますし、数メートルの高さから落ちてもかすり傷なくらいは頑丈なので、賊の2~3人は問題なく対処しそうな気がしますが…
ターポンの許可を得て「保安モード」に入るアルファさんなんぞを見てみたい気もします^^;
140話の「できる限り海の近くを走ります」につきましては、子海石先生の「未来に連れて行って」の言葉に従って「旬のもの」の風景を「ちゃんと見て」るのではないかというご指摘をいただきました。確かにそのとおりでありますので、「治安」の話と関連付けるのは削除いたします。
ただ、何らかの理由により西ルートではなく東ルートを選ぶ場合があることは、作中描写から明らかだと考えております。(2021/8/12)
個人的イベントー!(Y字路)
今回は「カメラのサラサラしたボディをなでていて」「いつのまにか午後になっちゃった」アルファさんが、突然思いついて北の町に向かう際に通過した「Y字路」をご紹介します。
その場所は北の町(現横須賀中央付近)の少し手前、佐野町というところにあります。
アルファさんは南からこの「Y字路」に到達したと思われますが、現代でも交通の要衝である衣笠十字路を通行する必要があります。かなり内陸部なのですが、ここも数十センチ程度浸水する可能性があります。別の話の中で「きぬがさ」はまだ比較的栄えている描写がありますので、北の町に通じる道中はう回路やかさ上げ等で維持されている可能性は十分にあります。
このいわゆるアルファさんの「個人的イベントー!」には「①ガソリンスタンド」「②トンネル横の上り坂」「③住宅地の中の比較的急な下り坂」「④Y字路」「⑤北の町の丘の公園」の5か所描写があり、その4番目となります。
他の場所は目星はついているものの、ランニングで行くのはちょっと辛い距離なので、いましばらくお待ちいただければと思います^^;
作中の描写は次の通り。
左にカーブするメイン道路の右に細い道路が分かれていきます。現在の風景は次の通りです。
建物は作中のままとはいきませんが、道幅はそのままの雰囲気を捉えています。久里浜が水没し、東側から横須賀中央に到達することはできなくなっているため、事実上このポイントが作中の「Y字路」と思ってよいでしょう。
NTT横須賀研究開発センタ
今回は、オーナーからカメラを贈ってもらったアルファさんが写真撮影に行った場所のひとつ。「NTT横須賀研究開発センタ」をご紹介します。
そこにつながる通りは「通研通り」と呼ばれ、横須賀屈指の桜の名所となっています。今回は桜の時期と重なったのでせっかくなので動画でお伝えしようと思います。
カフェアルファから「NTT横須賀研究開発センタ」までの距離は以下の通り。
結構遠いです。また、この時にアルファさんが通った道順は「長井給水塔」→「ガソリンスタンド」となっていることから、西之崎と仮定しているカフェアルファや、三崎口~小網代の森入口間としているガソリンスタンドとの位置関係と矛盾が生じるため検証の余地があります。
とはいいましても、「NTT横須賀研究開発センタ」を訪れたことは、その特徴的な建築物の描写から明らかであり、今回はそこだけに絞って記事を書こうと思います。
作中では上り坂と、右手奥に伸びる巨大な建物が書かれています。では現代の姿を見てみましょう。
現代では桜をはじめ木々が生い茂っており、「NTT横須賀研究開発センタ」までの視界を遮ってしまっています。
しかし、木々の間から垣間見える建物は作中のものと同様です。
アルファさんはここでの撮影を諦めたあと、「NTT横須賀研究開発センタ」の横を通り過ぎ、自衛隊武山駐屯地付近の西海岸に出て北上。北の大崩れに向かいます。
ORANGE FOOT
今回は若かりし子海石先生とおじさんが待ち合わせたコンビニ「ORANGE FOOT」のモデルとなった場所をご紹介します。
その場所は子海石先生の病院の真下であることが第14話および第15話から明らかになっています。ポストカードブックによると子海石先生の病院は野比海岸の東の端と推測されます。
「カフェアルファ」からはおおよそ10km。結構遠いですね。
最寄りのバス停は「外来門入口」か「千駄ヶ崎」となりますが、今回は「外来門入口」としましょう。
「外来門入口」バス停です。側には久里浜医療センターへ上る階段があります。
「ORANGE FOOT」方面を望むとこのような感じに。
歩いていくとお店前のカーブが見えてきます。
ふと振り返ると、雨崎まで見通せます。天気の良い日はなかなかの絶景です。
そして目を戻すともうそこは未来の「ORANGE FOOT」予定地です。10年前は別の建物と何やら石碑のような門のような物があったのですが、いまは駐車場になっています。
子海石先生が腰かけたフェンスはこの辺りでしょうか。うっすら「く」の字の道路跡が同じですね
「おそい!」「すんません」
第15話112ページで「ORANGE FOOT」を上から見下ろす描写があります。なんとか同じ構図を撮れないか頑張ってみたのですが…
もうちょっと丘の方に登らないと無理そうです。そこは市が管理する建物がありさすがに入れません。夕凪の時代に入り地方行政が崩壊すれば入れるのかも…(笑)
今回は初声から走ってここまで来たのですが…さすがオーバーワークでした(汗)バイク欲しい~
アルファさん看板を乗っ取る!?
今回は「ヨコハマ買い出し紀行」の最初も最初。まだ0話も始まっていない一番最初の扉絵の部分にスポットを当ててみたいと思います。
この扉絵からわかるのは、
- アルファさんが朽ちたリゾートマンションの看板を取り外して「カフェアルファ」の看板を設置している。
- 「カフェアルファ」の場所から5kmである。
- 「カフェアルファ」に向かって左手に海が広がる
くらいでしょうか。では「カフェアルファ」から5kmとはどのような範囲でしょう。
上図の赤い線がカフェアルファ(西ノ崎)から直線距離5kmの範囲です。実際に道しるべとして距離を記載する際には、道なりの距離を記載するでしょうから、看板が建てられたのはその内側と考えるべきでしょう。目安として直線距離4kmの範囲を桃色で示しました。
すると、カフェアルファに向かって左手に海が広がる場所は3か所に限られます。
ひとつづつ見ていきます。
①は、そこから南に向かうと仮定すれば確かに左手に海岸線となりますが、通行量の多い道があるようには思えません。わざわざ長井北部にお住みの方だけを対象に看板は立てないでしょう。
②は「三崎街道」渋滞時の抜け道として地元民を中心に使われる「県道215号」が東西に走ります。海面上昇の影響もあまり受けておらず、「夕凪の時代」でも一定の交通量を保っていると思われます。…が、この辺りは現在でも断崖絶壁が続き、作中のような穏やかな海岸線ではなくイメージが異なります。
③は海面上昇の影響を受けているものの「夕凪の時代」でも「野比方面」や「武方面」に抜けるための交通の要衝である可能性があります。
と、いうことで③に出向いて写真を撮ってきました。
いかがでしょう。この撮影位置は「夕凪の時代」には水没しているので、もうすこし標高の高い位置に看板はあると思われます。が、ほぼこの辺りではないでしょうか。特にアルファさんの背後にある海岸線と建物がよく似ています。
えー…決してアルファさんの「胸元」を拡大したかった訳ではないのです!(真剣)…ということで、私としてはこの看板が建てられた(乗っ取った)のは「三浦海岸付近」とさせていただきたいと思います。
「アルファさんが乗っ取った看板付近」